1985年、僕は総理と呼ばれていた。
* * * * *
地下鉄の階段を上がりきり、歩道に立つと、一陣の風が吹いた。
少し歩くと石造りの階段が見えてくる。ゆっくりと階段を上がる。
そして、周囲に目をやる。
平日の昼間、オフィス街で働く人たちが、それぞれの昼休みを取っていた。
先日雄二の納骨を済ませた絵里は、「水の広場」の前に立っていた。
嫌でも視界に入ってくる都庁の窓ガラスを見た。「あのガラスの向こう側にいる人たちはたくさん恋をしているかな」そんなことをぼんやりと考えながらその場にしゃがみこみ、1輪の花を置いた。
秋の空はどこまでも澄んでいた。
「1985年、僕は総理と呼ばれていた。」~完~