空の大きさ
矢野勇太。
勇ちゃんと呼ばれるやつは、
——矢野先輩の兄弟だった。
後ろで何か言ってるようにも聞こえたけど、俺はそれを無視してひたすら歩いた。
どこに向かってるのかも分からず、とりあえず歩いた。
「桐島、大丈夫だよ」
しばらく歩いていると落ち着いたのか堀内がそう呟いた。
「私はもう大丈夫だよ」
だから、と続ける堀内を見ると俺の好きな笑顔がそこにあった。
「ありがとう」
安心した笑顔でそう言われると照れる。
「別に。俺が歩きたかったから...」
と、一応訳の分からない言い訳をする。
「うん、でも、ありがとう」
その笑顔だけで俺は何もいらない、と思える。
また歩き出そうと一歩踏み出すと、ギュッと手を握られて後ろに若干引っ張られる。
「...あのさ、全部は、無理かもしれないけど...でも、話が、ある」
途切れ途切れそう言った堀内は俺から目を離す事はなかった。