宵闇
ペット
アタシはダンボールの中にいる。

捨てられた子猫と一緒だ。

誰かアタシを拾って。

誰かアタシに名前をつけて。

アタシは飼い主に捨てられた。

アタシにとってはかけがいのない飼い主だった。

そしてアタシはペットとして生きてきた。

飼い主のご機嫌をそこねないように

良い子に振舞ってきた。

そうしなければ捨てられると思ったからだ。

アタシは飼い主に全てを捧げた。

カラダも心も全て望むがままに。

でも・・・

アタシはたったひとつの過ちを起してしまった。

他の誰かを愛してしまう。

当然だろう・・・。

アタシは飼い主からは捨てられた。

『オマエは俺を裏切った要らぬペットだ。』

そういって、アタシはダンボールに入れられ捨てられた。

行く宛てもない。

アタシはこのダンボールの中でまた拾ってくれる人を探す。

今度は従順に尽くそうと心に決めながら・・・。
< 19 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop