宵闇
棘。
指先が痛痒い。

ほんの数ミリの棘が刺さっている。

それを見てアタシは、答えの出ないあの恋を想った。

アタシの中ではまだその『棘』はささったままで

『膿』も出そうででなくて、むずがゆい。

どんな想いとしてコトバに表せばいいのかわからない。

憎いとも想う。

今でも恋しいと時折想う。

殺めてやりたいとも想う。

今でもまだ、どんなカタチだとしても愛しているのかもしれない。

ただ、認めたくないだけで。

膿みを出したくない想いがどこかにあるだけで、

それはきっと答えが出てしまうことを怖れているからなのかもしれない。

膿がでればまた皮膚は再生する。

それと同じように、アタシもリセットすることができる。

指の棘を見ながら、

取るべきかそのまま膿ませてしまうべきか

どの気持ちが今のアタシらしいのだろうと考えていた。
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