そして悪魔は二度微笑む【コラボ】
「始まったか……」

小高い丘の上で、蓮城麻美は戦況を確認していた。
衛星のデータから布陣の確認、ヘッドセットを使用した会話の傍受。そして、敵の通信の傍受。

あの男、本当に何者だ? 
蓮城麻美は、この短期間で徹底的にベリル・レジデントについて調べ上げていた。

傭兵としての活動内容は勿論の事、各国のデータベースを洗い直す事である程度調べがついた。

また、敵施設にクラッキングを仕掛けた際に得た情報で、ジムの娘ニナ・ハミルトンを匿っている事も分かっている。

それらを総合すると、ベリルと言う男は今回の作戦において信頼しても良いと判断をくだした。

だが、奴の出生が分からない。この傭兵としての指揮振りに戦場の落とし子かとも思ったが、それは有り得ない。

洗練された物腰といい知識レベルといい、徹底した教育を受けていなければ身につかない物だからだ。

改めて戦場と化した研究所周辺に目を落とす。見事な手腕と認めざるを得ない。
傭兵達は、練度の差はあれ、圧倒的に武装の差がある相手を、時に囲い、時に狙撃しその戦力差を跳ね返している。

その動きは、まるで自分達の勝ちは揺るぎようが無いとでも言うかのように……。

「まあ、研究対象としては面白いが……」

別に急ぐ必要はあるまい。何故なら研究できる時間は永遠なのだから。

彼女は、そう口の中で呟くと、立ち上がる。

手元のモバイルPCには今、戦場にある全ての物体が表示されシミュレートされている。

現実の世界より若干時間が進む速度が速い。

それを目で追いながら、全ての動きを頭の中に叩き込んでいく。

此処までは、彼女のシミュレート通り推移していた。この分なら研究所内に侵入した頃にヘリが落ちる。

それを確認した後、彼女は腕時計の形をした特殊装置のボタンを押した。

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