そして悪魔は二度微笑む【コラボ】
ウルリッヒ・シュタイナー博士は、ビンの中からコーヒー豆を取り出すと手動のミルの中に入れた。そしてカリカリと音を立てて豆を挽いていく。

「確か……、グアテマラ産の豆を浅く煎った物がお好きでしたな」

問い掛けた先には一人の女性。少し茶色がかった髪を肩口で揃え、足首まで届く程の長い白衣を身に纏っている。

彼女はソファーの肘掛けを利用して頬杖をついていた。

均整のとれた面立ちは見る者を魅了する程に美しく、そのプロポーションはアジア系の面立ちに似つかわしくない程に美しい曲線を描いている。

「シュタイナー博士、コーヒーをご馳走する為に呼んだ訳ではあるまい」

コポコポとお湯を注ぐ音が部屋の中に響く。程なくして、良質のコーヒーが織りなすアロマで部屋の中が満たされた。

「ええ、ですが。いいコーヒーを飲むと頭の回転が良くなる。そうでしょう? もっともアナタの頭脳はいつもフル回転でしょうがね」

そう言って、ウルリッヒ・シュタイナー博士はコーヒーカップを彼女の前に差し出した。
彼女は、無言のまま出されたカップを手に持つと、鼻腔をくすぐる匂いを堪能してからその漆黒の液体に口をつける。

「ブラジル豆にブルーマウンテンをブレンドしたか? これはまたなかなか……」

「お気に召して頂けたようで……。アナタをお呼びしたのは、とある研究データを見て頂きたかったからですよ」

シュタイナー博士が、一つの封筒を彼女に手渡した。封を開けると化学式が所狭しと書き殴られたA4紙が一枚。彼女はざっとその化学式に目を通すと眉をひそめた。

「シュタイナー博士、これはどこで?」

「さあ、昔私の元で研究員をしていた男から突然それだけ送られてきましてな」



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