そして悪魔は二度微笑む【コラボ】
シュタイナー博士もまた眉を潜めるとコーヒーを一口含む。

「そして、彼とは連絡がとれなくなったと言う訳です」

「なる程な……。当局にこの事は?」

「まだ言っておりません。確信がもてなかった事もありますが、政治に利用されるか戦争に利用されるかのどちらかでしょうからな」

彼は悲しそうに伏し目がち答える。

「科学者の研究データなど行き着く所は同じだよ、シュタイナー博士。貴方が想像している通り、この化学式だと人DNAに劇的な変化を与える事ができるな」

「やはりそうですか……。どのような物かまではわかりますか? 私にも変化を与える事までは分かるのですが……」

「人を化け物に変える……、その類だよ。胸くその悪くなる研究だ。但し、これではまだ完成してはいない。いや……、完成させなかったと言うべきか?」

シュタイナー博士は自分の半分程の年にも満たない様に見える不遜な態度の彼女に、改めて尊敬の念を覚えていた。

これだけの量の科学式を一目見ただけでどのような物かを理解し、尚且つ問題点を指摘する。才能と言う壁は努力だけではどうにもならない物だと思わざるを得ない。

「それはどういう事ですかな?」

「巧妙に隠してあるが、三カ所程不自然な科学式が混ざっている。このままだと変化をもたらす事は出来ても維持は出来ない。外部流出した場合を考えたか……或いは」

「或いは……?」

「件の研究員もしくは他の科学者が、最低限の善意で改変したかだな」

シュタイナー博士は、悲しそうな表情を浮かべると溜め息をついた。

「となると……」

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