空へ。‐夢の先‐
紗姫「…最悪だよあたし…」

成二《んなこといちいち気にしてんじゃねーよ!》

紗姫「……?」

成二《ただの兄弟喧嘩だろ。…何ビビってんだよ》

紗姫「………………」

成二《…んなもん…

…いつの間にか忘れて笑ってんだろ》

紗姫「……そうかな…?」

成二《俺だって龍の従兄弟なんてだりぃことだらけで…うんざりだって思うけどよ》

紗姫「……………」



成二《…まあ、悪いことだけってわけでもねーよ》



少しだけ、電話の向こうで笑った気がした。



そうだ、そうだった。


成二だって、最初はそうだったんだ…。


だけど今の2人は、大丈夫。


喧嘩しても…兄弟なんだよね。




あたしは、部屋を出て電話を切ると隣の部屋のドアをノックした。



紗姫「……麻姫…ほんとゴメン。

…麻姫だって、父さんのこと…本気で思ってたわけじゃないんだよね


分かってやれなくて…ゴメン…


…おやすみ。」




自己満足、かもしれない。

だけどそれだけ言うと、殴ったときよりずっとずっとスッキリできた気がした。



もう一度自分の部屋に入って辺りを見回す。

物が大分少なくなって、大きなカバンがある。



明日から1年間この部屋を出る寂しさが、今更になって伝わってきた。



1年間、母さんや瑠姫姉と買い物に行ったり

父さんや仁喜におごってもらったり

麻姫や笑喜と騒いだり

唯喜を迎えに行ったり

悠太や、恭也や章介と
笑い合ったりすることもない。




静かにベッドに入って、目を閉じた。




寂しくても、あたしは行かなきゃならない。


自分の夢を掴むために───。


いつか、この家族があたしを自慢できるような人になりたい。




頑張るよ、何があっても。


だからみんな。

みんなは変わらず、この場所であたしを見守っててね。
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