不思議な国のありす


城の中に入ってみれば思いの外普通だった。

(いや、城の普通ってのがわかんないけどさ)

端の見えない長い廊下には真っ赤な絨毯。
壁には一定の間隔をあけて燭台があり、唯一足元を照らしてくれている。


「なぁリリー、女王様とやらはどこにいるんだ?」

少し前を歩くリリーに声をかける。

「そぉね、女王は気紛れだから私にもわからないわ」


蝋燭の火に照らされて淡くオレンジに輝く髪を揺らして振り向き首を傾げる。


「……は?」


思わずすっとんきょうな声が出てしまった。

(オイオイ、俺は何時になったら帰れるんだよ)

そこでハッと思考が止まる。


「なぁ、今何時だ?」

すると、キョトンとした顔で見つめられ、


「ナンジとは何かしら?」




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