口笛
「もう朝か‥」

 僕は呟き、二階の寝室から下の居間に下りると、すぐにカーテンをめくり外を眺め、絶望的な気分になった。

「あーあ、こんなに積もっちゃって‥」

 昨夜までせいぜい膝下程度だった積雪が、ゆうに腰の高さまで来ている。雪が降り続く天を恨めしく睨みながらも、覚悟を決めて着替えを始めた。

 まだ薄暗いに出ると、雪の勢いは、窓から眺めた時よりさらに増しているように見えた。大きな通りは、早いうちに市の除雪車が通ってくれたようで、まだ走り良かったのがせめてもの救いだった。

 配達のエリアに近づくと、道が狭くくなり、除雪車が通らないので、配達は困難を極めた。そうこうして配達を終える頃には、もう七時をとうに回っていた。

 予定の時間よりも一時間近くオーバーだ。家に帰り、ビショ濡れの防寒具を脱ぎ捨てて顔を洗い、食卓に付く頃には、兄や弟はもう学校に出かける時間になっていた。

「今日は先に行ってて」

 そう母に告げられると、二人は返事をしながら玄関を出て行った。

「そう言えば、さっき和也君の家から電話があって、今日は、風邪で休むって」

 母がパートに出る支度をしながら僕に告げた。

「ちぇっ」

 僕は、そう舌打ちすると、食事を途中で切り上げて、学校に行こうとしたが、

「食べなさいよ」

 と言う母に制止され、結局最後まで食べることになり、家を出たのは、八時を回っていた。雪さえ無ければ、始業までに充分間に合う時間ではあったが、この雪ではかなり厳しい。

(今日は遅刻かも・・)
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