二 億 円





「ペンキペンキ…うわ、汚いな…しかも何色だよこれ…赤黒い。」



赤黒いペンキなんてあるんだ、と妙に関心しながら、鎖を引っ張り出す。



「…どれだろう。」



予想以上の量の鎖に圧倒されながら、一番綺麗なものを選び、赤と黒のペンキを再び探す。




「でも何に使うんだろう…工芸?猫の小屋でも作るのかな。」



何て言ったって“子猫ちゃん”がいるらしいし。



「あった。でも黒が少ないな…一応この赤黒いのも持っていくか。」



ペンキ三色と鎖を荷台に乗せ、俺は温室へ向かった。






「日向。何しているの?うわ、ペンキに鎖…?趣味悪っ!!!!」



明らかに敬遠したような声をあげ、此方を見ていたのは刹那だった。



俺と同じ使用人。


ストレートの綺麗な黒髪に漆黒の瞳。細身で身長はやや高い。彌生兄さん曰く理想のメイド、らしい。ただ一つ問題は




「日向キモイ。近づくな変態。」




言葉遣いが非常に雑である。




俺だけでなく彌生兄さんにすらキモイやらウザイやら…一体こいつは何様なんだ、と常日頃思う。




「で?それ何に使うのよ。また拷問の道具にでも使うつもり?」


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