溺愛プリンス

ギョッとして固まっているあたしに、今度は首筋に唇を寄せたハル。




「からかってなんかない」



頭、真っ白。

一瞬なにをされてるのかわからなくて、息をするのも忘れてしまった。



茫然としてるうちにくるりと向きを変えられて、ハルはまっすぐあたしを見つめ返した。

優しく頬に触れる手。
そのまま髪をすかれ、ますます固まってしまう。



「…………ハル?」

「この俺が、簡単にこんなことすると思ってるのか?」

「…………」


わからない。

これって……なに?
どういう意味なの……?



「志穂……」



次々に降ってくる甘い刺激に、思わずギュッと目を閉じる。

頬、耳、唇の端、瞼。
唇以外に、キスをされた。


ドクン!
ドクン!



心臓が、ありえない速さで加速する。

そのせいなの?
頭が、変になりそう……。

そして最後にチュッと前髪にキスをしたハルは、あたしを覗き込むように見るとクイッと唇を持ち上げた。

瑠璃色の瞳の中に映る自分。
その顔は……なんていうか、ヒドイ。


「いつもそうしてればいいものを……」

「……?」


そう言ったハルの口ぶりは、なんだか嬉しそうで。
楽しそうだ。


ハルは両手であたしの顔を包み込んで、妖艶に微笑んだ。



「俺が欲しいって、そう顔に書いてあるぞ?」

「…………」



……な、なな、な!




「ふ、ふふ、ふ、ふざけないでっっ」




バッチーーーーーン!!!!


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