溺愛プリンス


背中に感じる体温。

あたしを囲うように置かれたハルの手。

甘ったるい香水の香り。


……ハルの、香り。



「……っ、ハル、何してるんですか?動けません……」



その腕から逃げようとすれば、さらに体を寄せてハルはあたしを覗き込んだ。



「志穂が言ったんだろ? ”返すものがない”って。だから、その機会を設けてやったんだ」




この前のドレスの件か。
それで、この手料理?


「……そうですか。わかりましたから、そこをどいてください。お返しが作れません」

「断る」



は!?


何言って……。

パッと顔を上げると、すぐに瑠璃色の瞳と目があった。
真っ黒な前髪の向こう側で、長いまつ毛がゆっくりと動く。

うすく微笑んだその表情は、なんて言うか……危険。



「か、からかうのは、よしてください」



慌てて視線を逸らし、手元に集中する。

肉じゃが……
肉じゃが……。


でもそれをハルは許さなかった。


「!」



いきなり掴まれた手首。
そこに、キスを落とされた。

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