溺愛プリンス

たくさんの人に囲まれて、たくさんの人の笑顔に応えて。
たくさんのフラッシュを浴びて……。



ハルが、笑ってる。






『ハル王子って……本当に王子様だったのね』

「…………うん」




ブラウン管の向こうのハルは、知らない人みたい。

あれが、彼の本当の姿。


そばにいるって思っていたのは、日本の文化を学ぶためであって。
間違っても、あたしの為じゃない。


違うんだから。



勘違い、しないようにしなくちゃ。



彼の隣に寄り添うようにいるのは、ブロンドのキレイな女の人。
あの人が、ハルの相手なんだろうか。


あたしは、ハルの事なにもしらない。
知ろうとも思わなかったし、知りたくもないって思ってた。


思ってたのに……。




『ハロルド王子は、公務に積極的に参加され……』



ニュースキャスターの言葉さえ、まるでフィルターがかかってるみたいで。

遠くから聞こえてる。






あたしは、ハルの特別なんかじゃない。

そして、あたしも、そんなこと思っちゃダメなんだ。




目が、覚めた気がした。



< 122 / 317 >

この作品をシェア

pagetop