溺愛プリンス
「ちょっと……」
1人がヒョイッとあたしを持ち上げて、もう1人が黒塗りの大きな車の後部座席のドアを開ける。
簡単に車に押し込まれてしまい、慌てて振り返った。
タイミングよくショーンさんも乗り込んでくる。
――――バタン!
「ちょっとショーンさん!お、追って説明とかなに?
いま!今この状況を説明して!」
「少しはお静かに」
「やだやだ! 助けて篤さーーーんっ」
必死に手を伸ばしたあたしに、篤さんはなぜかニコニコと手を振りかえした。
「シートベルトお締めください。車が出ますよ」
な、な、なんでぇぇぇぇ!?
…………こうして。
まったく状況を飲み込めないまま、あたしを乗せたやたら大きなベンツは滑るように走り出したのだった。