溺愛プリンス

王子のために出来る事。



ハルが……軟禁なんて……。
実のお父さんなのに、どうして……。


その日の夜。
ファブリック伯爵のお屋敷に滞在することになったあたしは、青白い月明かりの中。
窓から空を見上げていた。


まさか海を越えて、ハルを追いかけてきちゃうなんて……。


これ、持っててよかった。


ベスが用意してくれたネグリジェの胸元に、月明かりを受けてキラリと輝くのは。
あたしの誕生日に、ハルがくれた鍵がモチーフのネックレスだ。


高価な物だろうし、身に着けるのは怖かったけど……今だけはいいよね?

ハルがそこにいてくれるような気がして……。
……ちょっとだけ、安心する。




ベスの話だと、舞踏会は一週間後。
それまでに、必要な教養と、なにより作法を勉強するんだって。

あたしなんかって思うけど……ハルが困ってるなら。
ハルのために、あたしになにか出来る事があるのかもしれない。



「……あたし、やってみるよ。ハル」



胸元のネックレスを両手で大事に包み込んで。
満月にそっと願った。


想いが、届くように。




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