溺愛プリンス


「もっと胸を張って! 上を向かないっ」

「は、はい!」



次の日から、舞踏会へ向けての特訓が始まった。



「手はここ!ほら、もっと胸を張るっ」

「っ……」




歩き方、立ち振る舞い、それに基本的なダンスステップ。

先生は、ここへ来た時笑顔で優しく迎えてくれたクロードさんという人だ。
メガネの奥の優しい眼差し……、笑った時の丸い雰囲気。


……に、だまされた!



すっごく怖いんですけどぉ!



「志穂さま! 集中してっ、ほらほら、頭が動いてますよっ」

「はいっ」



クロードさん愛用の杖があたしの膝をつく。


朝起きて朝食をとるその瞬間から、布団にはいるその瞬間までみっちりしごかれて。

一週間が、途方もない時間に感じてしまった。




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