溺愛プリンス



唇に触れた、やわらかな感触。

でもそれは自覚するより早く、離れてしまった。



「…………」



呆然とするあたしと目線を合わせるように、ハルは体を折り曲げる。
覗き込むようにされて、今さら頬が熱くなった。


ぼぼぼぼって感じで真っ赤になったあたし。

それを見ておかしそうに瑠璃色の瞳を細めたハルは、クイっと口角を持ち上げた。



「……バカだな。俺だって、逢いたかったに決まってるだろ」

「……っ、……」



甘く……うんと甘くそう言って、ハルはキスを落とす。

重なった手に、指が絡められる。
持っていたマスクが、手から零れ落ちるように転がった。











「っ、は……ハル……待って」


深くなるキス。
息が上がりそうになって、たまらずハルの胸を押しやった。



「……忘れたのか? 待っては、なしだ」

「……んっ……」



いつのまにか壁とハルの間に閉じ込められて、立っているのもやっと。
まるで甘噛みするように、耳たぶにキスをされて、ギュッと目を閉じた。


頭がボーっとする。
ひとつひとつ、思考回路がハルのキスで止められていく。




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