溺愛プリンス


「…………」


カツンとヒールを弾いて踵を返す。
近くにいるはずのショーンさんの姿を探した。

行かなきゃ。
一刻も早く、リュンヌ・メゾンに行かなくちゃ。




色んな人に掴まっていたハルは、きっとすぐには来られない。
それでも、早く行ってハルを待っていたかった。



突きつけられた現実に、崩れそうな足を必死に動かして。




……いない。
ショーンさん、どこ?



探してるうちに、お屋敷の外に出てしまった。

ヒンヤリとした秋風が肌を撫でる。
薄曇りの夜空には、小さな満月が儚げに揺れていた。

星達が見えない夜空に浮かぶ月は、ひとりぼっち。
まるで今の自分のようで……。






「……………っ、く……」





我慢していたはずの涙。

ハラリ、ハラリと仮面の下を伝う。
ギュッと唇を噛みめて、ネックレスを両手で握りしめた。






いつのまに。

こんなにもハルのこと、好きになってたんだろう。




好きで、好きで。


姿を見るだけで
泣きそうなほど心が締め付けられる。


声を聞くだけで
胸がギュッとして身体が震える。


そのぬくもりに触れたいけど
……怖いとも想う。






あたし……、バカだ。


こんな気持ちに今更気付くなんて。

大バカだ……。


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