溺愛プリンス
「……」
ダメダメ。 頑張るって決めたんだもん。
平凡だったあたしの毎日は、こうしてどんどん変わっていくんだけど……。
この人が隣にいてくれるなら、あたし、きっと大丈夫。
チラリ、とハルを盗み見る。
まっすぐに背筋を伸ばして立つハルは、どこからどう見ても王子様。
瞳と同じ色の正装が、その存在をまた輝かせてるみたいだ。
中庭を眺めていたハルは、視線だけをこちらに向けた。
「まあ、あのふたりは幼い頃から想い合っていたからな。マルクに少々強引さが欠けていたのがベスにとって気がかりだったらしいけど。
結婚を申し込んだのは、マルクからだったらしいし。ベスも喜んでたよ」
「そうなんだ」
あたしに対してはえらそうだったあのマルクの態度を思い出して、思わず笑みが零れた。
「でも、ベスが幸せそうでよかった」
尻に敷かれるマルクが想像つくけど。
クスクス笑ってハルを見上げると、思いのほか真剣な眼差しがあたしを見つめていた。
ドキンッ
目が合っただけなのに、頭がくらくらする。
全身に、血液が駆け巡る。
ドキンドキンって、心臓が早鐘をうつたびにハルが好きなんだって体中が叫んでる気がした。