溺愛プリンス
……それを見て、思い浮かぶのは。
美味しそうにおまんじゅうを頬張る、ハル。
「……」
フルフルと首を振ってそれをかき消すと、のれんを胸に抱えてお店の中に戻った。
……あれ。
ハッと顔を上げる。
照明を落とした店内に、篤さんがいた。
真剣な横顔。
……トクン
「……」
その指先から、なんとも繊細な和菓子が産み落とされる。
思わず見惚れていると、篤さんがあたしに気付いて顔を上げた。
「……あれ、志穂ちゃん。 まだ帰ってなかったんだ」
真剣な顔が一変、人懐っこい笑顔。
その事になんだかホッとして、あたしは篤さんの傍に歩みよった。
甘い、甘い砂糖の香り。
篤さんの……香りだ。
「……新作、ですか?」
「……ああ、これ? んー、まぁね。ほら、食べる?」
手の中に納まっていた、かわいらしい和菓子。
篤さんはそれをあたしに差し出した。