恋迷路〜マイゴノコイゴコロ〜
「…って、何言ってんだろ。ははっ…私、優介先輩の前では泣いてばっかりですね…。」
そう言った次の瞬間、私はなにか、温かいものに包まれていた。
「ゆー…すけせんぱい…?」
背中に回っている腕に、ぎゅうっと力がこもる。
「…柚杞ちゃんのこうやって泣くところ、これ以上見たくない。…どうしてっ!どうして柚杞ちゃんは智晴のことが好きなんだよ…っ!俺の方が柚杞ちゃんを好きなのに…!!」
普段の『優しい』優介先輩が、悲痛に叫んだ。
優介先輩が…
こんなに声を荒げることは、めったにないと思う。
「優介…せんぱ…」
「分かってる…。柚杞ちゃんが、智晴を好きなこと。でも…」
私の声を遮るようにつぶやく優介先輩。
「俺はズルいんだ。…こうやって、弱ってる柚杞ちゃんにつけいることでしか、柚杞ちゃんに気持ちを伝えられないんだから…。俺が、ズルくて弱いんだ…。」
抱きしめられていて、優介先輩の顔が見れないよ…。だけど、分かる。
弱い私が自分を責めないように、優介先輩は自分を悪者にしようとしてること…。
背中に回った手が痛いくらいに強くて。
…優しくて。
私は智晴先輩が好きなのに…
私は智晴先輩を想っているはずなのに…