恋迷路〜マイゴノコイゴコロ〜
カラオケボックスを抜け出して、私たちは静かな場所に来た。
ベンチに座る。
人一人分の、私と智晴先輩との距離感に、少しだけ、切なくなる。
「俺と舞花はさ…まぁ、幼なじみみたいなもんでさ。」
ポツリ、ポツリ。
記憶を紡ぎだすように、過去を振り返るように、先輩は言葉を繋げていく。
「そんで、俺と舞花と、あと、奏多(かなた)ってヤツの親どうしが仲良くてさ、三人でいつも遊んでたんだ…。それから、当たり前みたいに俺は舞花を好きになった…。」
ズキリ、と胸が痛む。
鈍い、火傷のような痛み。
「で、舞花は、当たり前みたいに奏多を好きになった…。でも奏多、女好きでさ。舞花と付き合いだしてからも、他の女との繋がりが切れなくてさ。で、そのことを舞花がちょくちょく俺に相談してくるようになって。…それが、今も続いてるワケ。」
一通り話し終えると、智晴先輩はふぅ、と息を吐き出した。
「…俺と舞花は、ただの幼なじみ。舞花にとっての俺は、ただの相談相手。」
最後に先輩が呟いた言葉が、痛々しく響く。
私は…
涙が止まらなかった。