A線上の二人
「何?」
「いや。千夜らしい」
「何がよ。だってそうじゃないの? つまり史之は私に内助の功をしてもらいたかったて言うんでしょう?」
就職した会社で上手くいかない。
どこかの誰かに頼りにされたい。
つまり私に〝必要な人〟だと言わせたかった。
たったそれだけのコトじゃない。
「やっぱり、私に惚れたはれたは性に合わないわぁ」
「そう?」
そう言って、達哉くんは首を振る。
「彼の敗因は、千夜の性格を熟知していなかった事だろう」
「何よ。あいつの肩を持つわけなの?」
「男としては同情する」
「私を慰めようとか思わない訳なの?」
「慰めて欲しい?」
問われて一瞬言葉につまってしまった。
別に、慰めも同情もいらないかも。
……案外、あっさりしている自分がいて驚く。
長くて、どこか冷めた関係が終わった。
それが残念な様な気もするし、そうじゃない自分がいたりもする。
「千夜は恋愛音痴だな」
「薄々そうじゃないかと思ってた」
素直に頷いたら、達哉くんは溜め息をついて目を瞑った。
「僕には解るが」
「何が?」
「誰かに傍に居て欲しいって気持ちは」
誰かに傍にいてほしい……。
一人になりたい……その気持ちなら、何となく解るのだけれど。
「寂しい時、嬉しい時、何かあった時、または何かある時。誰かが傍にいてくれるのは、正直嬉しい」
「そう?」
「うん」
頷いて、じっと見返してくるその視線はとても澄んでいて……
思わず魅入ってしまったら、急に目をそらされた。
「千夜は、いつも誰かが傍にいるから……気付き難いかも知れない」
「私、鈍感?」
「かもね」
……そうかもね。
きっと、そうなんだろうと思う。
空気読まないし。
ところ構わず話し続ける事も得意。
余計な事に首を突っ込むのは……まぁいつもの事で。
「一方的に別れ話をして〝どうして〟って返ってきたんだ」
「僕の事はいい」
素早い返答に笑った。