God of Death
 ーーせめて、春までは生きていたい。もう一度、この窓から美しい桜を見たい。
 彼女は右拳をぎゅっと握りしめ、胸に当てた。そして、静かに目を閉じた。

 
 昔から身体が弱く、十六歳まで生きられるかどうかと言われていた。
 現在、十五歳。本当なら高校一年生だけど、勿論学校には行っていない。受験すら受けていない。十歳のときからずっと、病院にいたから。
 今は十二月で、私の誕生日は三月。このままだと、多分___。

 ーー死ぬことが……怖い。

 彼女が、閉じていた瞳をゆっくりと開く。じわりとにじむ涙が頬を横につたい、耳を通過してベッドに落ちた。そのときだった。
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