Love Water―大人の味―




目が覚めて最初に飛び込んできたのは、見慣れない黒いかけふとん。



ぼんやりする頭でしばらく考えていると、ふとんから香るシトラスの香り。



「いいにおい……」



なんて思いながら、再びまぶたを閉じようとしてはっと気づく。



起き上がって見回したそこは、どう見ても男の寝室だった。



壁に沿って並ぶ2つの大きな本棚に、シンプルな机とイス。



クローゼットからベッドから家具全てが黒と白で統一された部屋。



………部長の部屋。



「わ、わわわわ……」



どうやらあたしは、昨日あのまま眠ったようだ。



慌ててベッドから降りてリビングへと続くドアを開ける。



まさか、上司の部屋で眠ってしまうなんて。



図々しいのもいいところだ。



それより、部長は絶対怒っているはずだ。



だって、あたしがベッドで寝たせいで、部長は……。



まさか上司のベッドを奪って眠るなんて。



……雨衣、今日で会社クビかも。



< 23 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop