Love Water―大人の味―
目が覚めて最初に飛び込んできたのは、見慣れない黒いかけふとん。
ぼんやりする頭でしばらく考えていると、ふとんから香るシトラスの香り。
「いいにおい……」
なんて思いながら、再びまぶたを閉じようとしてはっと気づく。
起き上がって見回したそこは、どう見ても男の寝室だった。
壁に沿って並ぶ2つの大きな本棚に、シンプルな机とイス。
クローゼットからベッドから家具全てが黒と白で統一された部屋。
………部長の部屋。
「わ、わわわわ……」
どうやらあたしは、昨日あのまま眠ったようだ。
慌ててベッドから降りてリビングへと続くドアを開ける。
まさか、上司の部屋で眠ってしまうなんて。
図々しいのもいいところだ。
それより、部長は絶対怒っているはずだ。
だって、あたしがベッドで寝たせいで、部長は……。
まさか上司のベッドを奪って眠るなんて。
……雨衣、今日で会社クビかも。