Love Water―大人の味―
空はどんより灰色。
いつもの綺麗な夕焼けなんて、しっぽすら見せない。
ぐらつく足をなんとか進めて、目指す先はハチ公前。
そう、恋人達の待ち合わせ場所、ハチ公前。
いつもならルンルン気分で行く道のりも、今日はなぜか足が重い。
泥のように、足に何かが絡み付いてくる。
まるで、
「行くな」
って言ってるみたい。
でも、それに抗うようにしてあたしは前だけを見据える。
徐々に近づくハチ公前に、嫌な汗が流れる。
そしてとうとう、彼の姿を目にした瞬間、心臓が有り得ないほどの速さで打ちはじめた。