Love Water―大人の味―
ぴったり1時前後、再び自分のデスクに戻って仕事。
キーボードを打つ音や、コピー機が一定に刷り上げるプリントの山。
いつもと同じ光景なのに、なぜか色褪せて見える。
そしてそれを、客観的に見つめる自分がいる。
依然、警鐘は鳴り続けたまま。
ぼんやりと与えられた仕事をこなして、気づけば勤務時間終了となっていた。
「お先っ!」
時計の長針が12にきた瞬間に、荷物をまとめて立ち上がる梨華。
彼女が残業をしているところを見たことはない。
定時ぴったりに帰るのが、彼女のモットーだとか。
そういうあたしも、今日は梨華を見習ってすぐにデスクを片付ける。
「お疲れ様でした」
挨拶をしてフロアを出れば、途端に激しさを増す警鐘。
それを堪えて、あたしは会社の外へと足を進める。