苦い舌と甘い指先
本当に掴みどころが無いと言うか、考えてる事が一切表に出ないタイプの男。
きっと死ぬまでかかっても、コイツの言動の意味は理解できないと思う。
なら、考えても無駄だっつーことで、ドリンクバーから持って来たジンジャーエールを一気にストローで吸い上げた。
「……げふっ」
「汚ッ!…ジュノちゃん。女らしくとは言わないけど、もう少し普通の人間らしい行動を取るべきではないだろうか」
「…るせーな。げっぷも屁も、人間として至極自然な摂理だ!貴様はげっぷも屁もしないと言うのか!」
「……そういう事じゃないでしょ。人前では控えましょうね、って事ですよ」
………なんか常識人ぶってますが。
「お前だって人に自慢できる様な事、してねぇだろーが」
「………まぁ、そうだね」
カノジョが居るのに人に…ちゅ…チューなんかする男だし?
しかもその仕方が半端なく犯罪臭いし。
げっぷがどうとか人に説教かます前に、自分の行動を反省しやがれってんだ。
…と、そんな事をもごもごと呟くと、肥後は、ははっと声を出して笑い
「分かってるよ。…もう何もしませんから。
前に、キミがして欲しいって言わない限り、俺からは手出さないーなんて言っておいてあれだからね。
今度こそ、守る。
……もう、キミは俺なんかに触られたくないだろうし」
最後の言葉は、夏樹の一際大きな歌声でよく聞き取れなかった。
でも、聞き返すのもなんか気まずくて
「…ジュース、無くなったから取って来る」
「行ってらっしゃい」
何も出来ずに、空のコップを掴んでただ部屋を出て来たのだった。