苦い舌と甘い指先





「キモッ!!!!何この目!いつもの何倍あるんだよ!!」


鏡に映るのは、まるで初めてメイクをした男の子の様な、違和感丸出しのあたしで。


子どもがすれ違ったら泣き出すレベルのキモさだぞコレ!!



「ファンデとかは持ってきて無かったから、あたしに言わせればまだまだ序の口って感じ?アイライナーとツケマすればもっと大きくなるよ」



「……………」



キモイ。自分がキモイ。似合わなすぎる!!


愕然とするあたしに、夏樹は大きなため息付きで励ましの言葉をくれた。



「あのね、見慣れないから変って思うだけで、多分皆可愛いって思うよ?」


「……そりゃあどうも」



心にもない事を!こんなにキモイのに!


「てかさ、何であたしにこんな事……」


似合わないとはいえ、こんな事をして貰った手前申し訳ないが……。夏輝の意図が読めず、遠慮がちにぼそぼそと呟いた。


夏輝は意味ありげにあたしを見てから、ポーチに使った道具を仕舞い始める。



「……あたしには、どうする事も出来ないから。

ジュノちゃんがミツを取るなら、さっさと告白でも何でもして、くっついて欲しいのよ。

あたしは二人が好き。ミツもトシも、凄くカッコいいし優しい。良いトコも悪いトコも、みんなみんな、あたしなら受け止めてあげられる。


どっちかなんて選べないもん。…でも。


二人はジュノちゃんばっかり見てて、あたしなんか視界の端っこにも居ないから。


だから、ジュノちゃんに選んで欲しい。



あたしはそのおこぼれでも良いの。



どっちかがジュノちゃんを諦めてくれたら、あたしはきっと幸せになれるの。



……メイクは、その為の作戦、ってとこかな」




……うん。さっぱり分からん。



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