苦い舌と甘い指先
「…とにかくっ」
言いながら夏輝がこちらを振り向く。振り向いた瞬間に、ふわりと捲れたスカートの裾から真っ白で柔らかそうな太ももが見えて
男でもないのに、何かすげぇドキドキした。
「今日の夜、家に来て!もうママとパパには言ってあるの。今日友達呼ぶかもって!
そんで明日は、皆で遊園地に行こうよっ」
ね?
と小首をかしげてあたしを見上げる可愛い子。
こんな仕草、女でも可愛く思ってしまうんだから、男なんて…肥後なんてきっとイチコロだろうな。
あたしだってこんなに身長が高くなけりゃ、ちょっとは可愛くなれたのだろうか。
なんて
一番近くの女の子と自分を比べて、勝手に負けて落ち込んでりゃあ世話ないよな…。
「…うん、良いよ」
どうあったって勝てっこない。
幾らあたしが肥後を好きでも、もう肥後は夏輝の物。
二人が付き合う前まではあんなに女遊びが酷かったあいつも、今じゃ借りて来た猫の様に大人しいんだから
愛の力は偉大だと思う。
そんな所にあたしなんかが割って入って良い筈が無い。
だから
「でも、あたしとミツは早めに帰るぞ。…流石にずっと4人で居たら二人に悪いだろ?」
笑って言うんだ。
どうやったって叶わない。なら、影で想い続けるのも良いだろう。
それで良いと思っていた。彼女が傷つかないで済むなら、自分が傷ついたほうがマシだと思っていた。
でも違った。