苦い舌と甘い指先



「そっ…そういえばっ」


夏輝が白々しいなんてもんじゃないぎこちなさで会話を振って来る。


「今日…トカって、予定あっあるっ?」


「どもり過ぎじゃね?」


「うるっさいミツ!あたしの勇気を踏みにじったわねッ」


わーわーきゃーきゃー


…また始まった。事あるごとにじゃれるのはやめてくんねぇかな。


「…別に予定なんてねぇけど?」


仲裁も兼ねてそう言い放つと、夏樹は目をきらきらと輝かせ



「じゃあ、みんなで遊ぼうよッ」



そう言いながらあたしの両手をぎゅっと握りしめて来た。




「は?皆?」


「そう!あたしとジュノちゃんとトシとミツの4人!

ね、良いでしょ?」


良いも何も……。こんなに期待に満ちた眼で見つめられたら断るもんも断れねぇだろうが。


躊躇いながらも一つ頷くと、夏樹は本当に嬉しそうに笑いながら飛び跳ねていた。


だが。

「おい!夏輝!」

ミツが焦った様な顔で夏輝を部屋の隅に連れていく。



「わざわざ邪魔者を作るとか、お前は何考えてんだ。

イヴだぞ?カレシと二人っきりになれるチャンスだろうが」


「で…でも…っ」


「馬鹿だなお前、断る筈ねぇだろうが。彼女だぞ?」


「……わかってる、けど…。絶対にトシは…」


おーい、内緒話筒抜けですけどー。




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