苦い舌と甘い指先



寒さがあたしを突き動かす。


ぽっけに手を突っ込んで


マフラーに顔を埋めて




それでも寒いのを理由に、左側に立つ肥後に少しずつ近寄る。

寒いから、くっつけば温かくなる


そんな事は近付きたいが為の只の口実に過ぎないけれど


まだまだ素直になりきれないあたしにとっては、これが精一杯のアピールだった。



ポケットから手を抜いて


寒さを我慢しながら外気に当てる。


滲んだ汗が、冷えて指先が冷たくなったけど、そんなことどうだって良かった。


近付きたい


触れたい


隣に居るのに遠い人



今掴んでおかなきゃ。


イヴなんだから


これ以上のチャンスはない


あれ



でも





夏輝は……?






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