ヌードなアタシ

『あ、こまちちゃん乗るバス来たよ。
じゃあ、明日頑張ろうねっ!
瞬くんにも宜しく伝えて、バイバーイ』


奈緒は笑顔でアタシを見送った。


バスが走り出す。
 
窓から奈緒を見る
笑顔は消えて…うつむいている。

表情を確認したくって窓に近づくが
バスはスピードをあげ
奈緒との距離は瞬く間に広がる。


薄暗い街並み。

奈緒の姿は黒い影に変わっていった。



バッグから携帯を取り出す。

奈緒から貰った赤いストラップが揺れる。


着信を知らせるメッセージの表示が
このところ減ってきた。

もともと自分から送ることが少なくて
奈緒から来たメールに
返事をするというパターンが多かった。

瞬くんも…そう。


自分の忙しさにかまけて
奈緒や瞬くんへの気遣い足りなかったんだ。


そうだ…
瞬くんとのメールのやり取りも
回数が減っている。

時々、大介さんと一緒にマンションに来てくれるから
話したり、御飯食べたりしてるけど

2人でゆっくり話す時間は取れていなかった。



『駄目だな、アタシ…』

つぶやく…

自分の事でいっぱいいっぱいで
周りが見えていないんだ。

だから奈緒の変化にも
ただ狼狽えるだけで…
なにも出来ずにいる。

しっかりしなきゃ…


アタシは携帯をぎゅっと握り
すっかり暗くなった窓の外を見た
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