ヌードなアタシ

サーモンピンクの
やわらかな素材のワンピースに
白いサンダルヒール。

事務所に入っていくと
長沢さんはデスクから立ち上がり
アタシの前までやって来た。



『いい色ね…
とても似合うわ。
肌の調子も…うん、良いわね』



アタシはホッと胸を撫で下ろした。



『…なんかあったとか?』


『えっ?』


アタシは驚いて
長沢さんを見て聞き返す。



『なんだかゾクっとするわね…
色香と言うのかしら』



色香?
今日のアタシの気分は殺伐として
ざわめいているというのに…



『あの、失恋しました…昨日。
思いっきり泣いて
泣き腫らした目を冷やして…

だから、今日のアタシ
あまり良いコンディションじゃない…です』



『…あら』


片方の眉を高く上げて
長沢さんはアタシを見つめる。

そして、ふっと優しく微笑む。



『恋をすれば、
女は綺麗になるっていうけど
それだけじゃ深みは出ないのよ…
傷も、また…
女を磨くの、覚えておいて…

さあ、会場へ行きましょう』


長沢さんに促され
アタシは事務所を出た。
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