ヌードなアタシ

廊下の手洗い場を横切る。

髪と肩を少し濡らした
アタシの姿が映っていた。


ふと、立ち止まる…


天気のせいで肌寒いせいか
アタシの頬に赤みは無い。

でも昨日、大泣きしたとは思えないほど
目に腫れや充血は無かった。


なんだ…
いつもと変わらない顔してる。


心の中は、ザワザワと
悲しい思いが溢れ出しそうなのに…



目をそらし、また歩き出す。



『桜木…』



振り向くと卓己くんが
階段の踊り場の窓に寄りかかって
アタシを見ていた。


『あ…おはよう』



おぅ、と低く答えて
右手をあげ、アタシを手招いた。


『大丈夫か?奈緒と…話した?』


心配そうに見つめる。


『まだ…連絡は無いし。
アタシから連絡もしなかった』



いつも通りに話せている。


『さっきさ…隣の教室覗いたら
奈緒、黙って席についてたぜ…
騒いでいないアイツなんて
マジ、不気味なんですけど』


茶化すように言ってため息をつく。


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