ヌードなアタシ

『ずっとね…苦しかったの。
瞬くんと奈緒の事が頭から離れなくて。

初めての恋だったし
初めての失恋だったし
苦しいのは当たり前だって思ってたの…

それが、この前
瞬くんと会って…

彼の口から奈緒と別れたって聞いた瞬間
ずっとアタシにまとわりついてた
モヤモヤした苦しさが
すぅっと消えたの…

信じられないくらいに
ハッキリと。


奈緒と別れて
アタシに気持ちが戻るかもしれないって…

そんな期待とか喜びの気持ちが
そうさせたのかなって考えてみたけど
なんか違うの。

そんなのじゃない。

だって、アタシの心は…もう
以前のように彼を求めていない。

それなのに、なんで
別れたって聞いた途端に
重苦しかった思いから解放されたんだろう。

今、わかったの。

嫉妬だった。


アタシの彼氏を奪った奈緒に
アタシの親友に気持ちが揺らいだ瞬くんに
嫉妬してたんだ。

嫉妬で歪んでいた心は
2人が別れた事で満たされて
きっと正常に戻ったんだね。

こわい、よね…

2人の不幸で
アタシの心は満たされたんだよ』


涙が流れた。

悲しいわけでも
辛いわけでもない。


卓己くんの背中に顔をくっつけて
声を出さずに泣いた。

マンションに着くまでの間、ずっと。
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