ヌードなアタシ

『…ママ、病気だったの?』


『同居の彼氏が言うには
具合悪い様子は全く無かったみたい。
昨日も普段通りお店に出てたって』


『転んで頭打ったの?』


『転んだような物音はしなかったし
傷も無いみたい…
今、病院で検査しているから』


『…まだ、意識無いの?』


『…ええ。
状況からみて、脳梗塞かもしれない。
脳の血管が破裂してしまう病気…』


知っている…
脳梗塞。

突然、死んでしまう事もある病気。

治っても、手足の麻痺が残ったり
記憶とか、脳に障害が出たりする。



アタシの手が震えている。
首筋のあたりがザワザワして悪寒が走る。


TVドラマで見た手術室のシーンが
頭にうかぶ。

カチャカチャと銀色に光る
冷たそうな手術道具。

周りに飛び散った真っ赤な血…

にぎった両手の指先から力が抜けて
目を閉じると暗闇の中で
赤と黒の渦が、ぐるぐると巻いている。


ゆっくりと深く息を吸い込み
酸欠を起こしかけている脳に
酸素を送り込んだ。しっかりしなきゃ…



ふと、ハンドルを持つケイちゃんの指先が
目に留まる。

気忙しく、トントンと
人差し指でハンドルをたたいている。

ケイちゃんは唇を噛み、
その横顔は青ざめて見えた。
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