ヌードなアタシ

煙突の煙を見ながら
この数日間の事を思い返す。

記憶は断片的に出てきては消える。

それは、何の脈絡もなく
勝手に現れ、アタシを支配した。

無意識に何度も頭の中で反芻させる。

ママは、もういないという事実を
認めさせようとしているみたいに。



ママが倒れてからの時間が
長かったのか短かったのか

今は、その感覚すら麻痺するくらいに
アタシの頭の中は混沌としていた。



『そんなとこに居たら
熱中症で倒れるわよ…』



力の無い小さな声で
ケイちゃんが背後から近づいてきた。



『そんな、ヤワじゃないもん』



ワザと明るい声で振り返る。

ケイちゃんの顔色は悪く
ひどく疲れた顔をしていた。

何を決めるにも、アタシじゃ心もとなく
結局、ケイちゃんに頼ってしまって…

アタシが熱中症で倒れる前に
ケイちゃんが過労で倒れてしまいそうだった。



『まだ、時間かかるって…
みんな、お弁当食べてるよ。
こまち、朝ご飯食べなかったでしょ?
戻って、一緒に食べましょう』


『…うん』


歩きながら、
もう一度煙突を見上げる。

揺れる煙を目で追ってママにお別れをした。


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