屍の孤島
伸びてくる土気色の腕を、秀一は払いのけながら走る。

時折上着を掴もうとするゾンビの手。

それを拳で払い落とす。

掴まれてしまえば終わりだ。

犠牲になった操舵手の老人の事を思い出す。

ゾンビ達は既に死んだ身の癖に、腕力だけは異常なほどに発達していた。

捕まったら最期、床にねじ伏せられて『食糧』にされてしまう。

…他の仲間達が心配ではある。

か弱い女性である奏や夕映の事は特に気になった。

こんな過酷な状況で、単独行動を強いられた彼女達は大丈夫だろうか。

守ってやりたいのは山々だが、ゾンビの群れに翻弄されて逃げるのが精一杯となった今では、無事を祈るしかない。

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