妖精なアイツ【完全版】
試合の結果は、負けだった。


…だけど。


「かっこよかったよ」


ナオはそう言って小野田くんに言った。
彼は、カッコ悪い所見せちゃったな、って笑った。


「あの…」


「ん?」


ナオは、言う決意をしたのか、真っ直ぐな瞳をして小野田くんを見た。


「私は、今まで恋とか…恋愛とか、そんなものに興味は無かったから…あんまりよく分からなくて…その、友達からで…いいかな?」


ナオは真っ赤な顔をしていた。


まだ答えは出ていないけれど、今のナオの気持ちは、小野田くんに伝わってるのかな?


「…もちろん、嬉しいよ!」


小野田くんも真っ赤になって笑った。


「…二人とも、真っ赤っかだね。」


高みの見物の私は、妖精と二人で、ナオと小野田くんを見ていた。


「ナオ、頑張ったね。」


「うん、頑張った。」


夕日と一緒に赤くなっている二人をしばらく見ていると、妖精がこう言った。


「…僕も、頑張らないとね。」


妖精はそう言って、真っ直ぐ前を見ていた。


…もう、決意はしたのだろうか。


「うん、頑張りや。」


私の胸のあたりで、ズキズキと、ドキドキと、音が鳴っていた。
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