妖精なアイツ【完全版】
妖精は立ち上がり、玄関のドアを開けた。


「ヒカル?」


「ブラザーのとこに行ってくる!」


そう言って、妖精はのり姉の家を出た。
心配そうな私を、のり姉が耳打ちをする。


「光太くんに着いていってあげて。私は大丈夫だから。」


そう言って、肩をトン、と叩かれた。


「ごめんね、行ってくる。」


私はコートを持って、外に出た。


妖精の姿は、すぐ見つける事が出来たが、なかなか追いつけない。


妖精は、今どんな気持ちでいるんだろう…。


「アイツ…毎日馬に乗ってるくせにこんな足はやいんかよ…」


立ち止まり、ハァーッとため息をついて呼吸を戻す。


たくさん雪が降っていて、よく見えないけれど、ここから見ると、電話をしている様子。


多分、染五郎さんにかけてるんだろう。


繫がらないのか、ずっと携帯を耳に当てている。


染五郎さんは、私の家に居る…けど、妖精はその事を知らない。


イチかバチか…叫んでみるか。
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