黄昏色に、さようなら。

『イトシイ』なんて恥ずかしい単語を、さらりと言ってのけるのが良子ちゃんクオリティ。


だけど、リアルで聞くと、恥ずかしいどろじゃない、


こっ恥ずかしいっ!


「べ、別にそんなんじゃないわよっ! ただの幼なじみ、腐れ縁だっていっつも言ってるじゃない!」


しどろもどろに抵抗を試みる私に、良子ちゃんは「はいはい」と苦笑を浮かべる。


「う~ん、やっぱり本人に聞くのが一番か。あ、きたきた、加瀬くん!」


純ちゃんが教室に入ってきた瞬間、クラス中の視線が集まったけど、それは仕方がない。


なにせあの頭だ。


「こっち、こっちー」


良子ちゃんに手招きされて歩み寄ってきた純ちゃんは、さぞかし山崎先生に絞られてヘコんでいるかと思いきや、そんなこともなく、


サバサバとした表情で良子ちゃんの質問攻撃を、「うん」とか「まあ」とか、適当すぎる返事でかわしている。


「それにしても、意外とあっさり解放してくれたね、仁王様。たっぷり絞られてくるかと思ったのに」


「まあ、日頃の行いが良いから、俺。『スミマセン、ほんの出来心です、月曜には元に戻しますー』、っつって、放免完了」


皮肉交じりの良子ちゃんのセリフに対しても悪びれるふうもなく、


いたずら盛りの少年のように、得意気にニカっと笑って言うその表情をみやり、思わずため息。


なんだか、それって、ものすごく。


「情けない……」


良子ちゃんが私の心を読んだみたいに、あきれたように呟いた。

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