黄昏色に、さようなら。

「そんなにあっさり元に戻すくらいなら、最初から休みの日に染めればいいのに、加瀬君にしては要領が悪すぎない？」


そうそう、私もそう思うよ。


ごもっともな良子ちゃんの意見に、純ちゃんは、


「まあ、俺にも色々事情というものがありまして。今日じゃないと駄目だったんだな、これが」と、少し困ったように鼻の頭をポリポリかいた。


あれ？


何気ないその仕草が、なぜか妙に引っかかった。


前にも、こんなやり取りをした事が……、ある気がする。


でも、いくら考えても、思い出せない。


「今日じゃないとダメ、ってどうして？」


良子ちゃんの、シンプルかつストレートな質問にハッと我に返って純ちゃんの顔を見上げたら、視線がばっちりかちあった。


うっ。


こ、これよ、これ。


家から学校までのさほど長くもない三十分の道のりで何度もあった、ふと気づくと、視線がかち合いドキッとするこのパターン。


決まってその視線は真っ直ぐで、物言いたげで――。


な、なんだろう？


私、純ちゃんに何かしただろうか？


考えても、答えは出ることもなく。


「まあ、色々とね……」


と言葉を濁して、純ちゃんも、はっきりと答えてはくれなかった。