黄昏色に、さようなら。
緩い左カーブに差し掛かった時だった。
すぐ前を走っていた大きなトレーラーが、ぐらりとバランスを崩し右側の車輪がフワッと浮かび上がった。
瞬きすらできなかった。
スリップし、横ざまになったトレーラーの最後部に付けられたプレートの『危険』の赤い文字が、スローモーションで大きくなっていく。
夜気を裂いて響き渡る、甲高いブレーキ音。
父の、母の、そして自分の、
声にならない悲鳴が上がり、
耳をつんざく轟音とともに、世界がグルリと回転した。
永遠とも思える、一瞬の恐怖の静寂。
その静寂を蹴破って、鉄と鉄がぶつかり合う重い衝突音が空気を震わす。
まるで作りたての飴細工のように、あまりにも簡単に、ひしゃげ潰れていく車体。
鼻をつくガソリン臭。
口腔に広がるむせ返るような、鉄の味。
何が起こっているのか理解する暇もなく、襲いかかるどうしようもなく圧倒的な力に、振られ揺さぶられ叩きつけられ、
やがて、視界が赤く染まった。