黄昏色に、さようなら。
なぜか、痛みは感じなかった。
あまりに深すぎる傷は痛みを感じないのだと、
そう教えてくれたのは、純ちゃんだったか。
優しい幼なじみの面影が脳裏に浮かんだとたんに、背筋を這い上がってきた恐怖心に全身が震えた。
――やだ。
死にたくない。
私、まだ死にたくないっ!
それは、生物としての死への恐怖。
純粋な、生への渇望。
『風花!? お前、風花なのか!?』
――純、ちゃん?
『大丈夫だ、必ず助かる。だから頑張れっ!』
朦朧とした意識の下で私が最後に聞いたのは、
なぜかその場には居ないはずの幼なじみ、加瀬純一郎の驚きに満ちた声だった。