黄昏色に、さようなら。

博士と純ちゃんが他の、というか本来の研究所の仕事に戻ったため、病室には私と良子ちゃんの二人が残された。


去り際に、博士に『風花ちゃんを、あまり疲れさせないようにね』と言われた良子ちゃんは、『分かりました』とニッコリ笑顔で答えていた。


純ちゃんと同じく、良子ちゃんも博士には、とても礼儀正しい。


なんとなく、ここで最強なのは、原口博士なんじゃないかと思う。


年上だということだけじゃなく、あのエンゼル・スマイルで穏やかに言われたら、私だって、たぶん『YES!』としか言えない気がする。


「そうなのよねぇ。あの無邪気な少年のような瞳で言われたら、さすがのアタシも、反論できないわぁ。無自覚な乙女キラーなのよね、あのおじさま。愛妻家で子煩悩なのもポイント高いし……」


ベッドサイドのパイプ椅子に陣取った良子ちゃんはそう言って、ベットに横たわる私に向かって、うんうん頷いている。


「あ、あの……」


考えていることに反応して答えてくる、ということは、やっぱり。


「ああ、アタシも一応超能力者の端くれなの。最も、全人類で一番多い最低のFランクのテレパス、って、こうして他人の心を読むくらいしかできないんだけど。

ごめんね、勝手に心を読んじゃって。マナー違反だね」


そう言って、良子ちゃんはエヘっと舌を出した。


なんだか、純ちゃんと同じようなことを言うので思わず笑ってしまう。


「あ、ううん、いいの。そんなに大したことは考えてないから」


あははと、手を振ろうとしたら、腕が少ししか上がらない。


そうだった、私の体は、リハビリが必要だったんだ。

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