黄昏色に、さようなら。
一連の様子を見ていた良子ちゃんは、力なく胸の上に投げ出してしまった私の手に自分の両手を重ね、励ますようにギュッと力を込めてくれた。
「不安だと思う。けど、博士も加瀬君も、アタシもついているから。イレギュラーでも、あなたは風花。アタシの親友なんだからね。それを忘れないでいて」
真っ直ぐな瞳に、嘘や偽りは見えない。
そう、私にだって分かっている。
この人は異世界で初めて会った人。
でも、この人の魂は、確かに良子ちゃんのものだ。
信じていい人だ。
純ちゃんや博士と同じように。
それは、理屈で考えることじゃなく、心で感じること。
「ありがとう……」
その手の温もりがやたらと胸にしみて、なんだか、鼻の奥がツンとしてしまう。
「あ、そうだ、聞きたいことがあるんだけど……」
気を紛らわせようと、さっき博士に聞きそびれていたことを、良子ちゃんに質問することにする。
「なに?」
「あのね、ここの世界の、風花――さんの事を聞きたいなぁって思って」
一瞬、良子ちゃんの手にビクリと力が込められ、すっと私の手から離れた。
「良子ちゃん?」
「うん、そうだよね。気になるよね……」
純ちゃんにはあれ程、歯に衣着せぬはっきりした物言いをしていた良子ちゃんが、とても言いにくそうにしている。
まさか。
まさか、ここの風花は……。
少しの沈黙の後、良子ちゃんは伏し目がちに、静かに口を開いた。
「風花は、死んだの。
一年前、政府要人を狙ったテロに巻き込まれて、死んでしまったの。
その場に居た、恋人である加瀬君の目の前でね……」
政府要人を狙ったテロに巻き込まれて、死んだ……?
その場に居た、恋人、
純ちゃんの目の前で?
静かに、そして残酷に。
告げられたその事実は、あまりにも重かった――。