黄昏色に、さようなら。

長い指がカーテンを引き開け、佇む声の主の姿が現れる。


濃紺のブレサーとグレーのスラックス。それに、エンジのネクタイ。


純ちゃんも、良子ちゃんと同じで見慣れた制服をまとっているのに、どうしてもそこに漂う非現実感が拭えない。


一番の原因は言うまでもなく、夢の中と同じ鮮やかなオレンジ色の髪。


サラサラな髪の下の色素の薄い真っ直ぐな瞳に視線が捕まり、早まる鼓動に更に拍車がかかる。


言ってしまおうか、夢の事を。


『こんな夢見ちゃったよ』と、冗談めかして。


きっと『少女漫画の読みすぎだよお前』って、笑ってくれるはず。


そう思うのに。


なんだか、怖い現実を引き寄せてしまいそうで、言葉が出てこない。


「風花、大丈夫か?」


心配げな純ちゃんにそう問われ、ビクリと、肩が小さく跳ねる。


や、やだ、何いちいち純ちゃんの声に反応してるのよ、私!


「あ、う、うんっ。大丈夫! 心配かけちゃってごめんね……」


口の端を上げるけど、うまく笑えず、引きつってしまう。


夢の事が、頭を離れない。


どうしてあんな夢を見たのだろう?


純ちゃんのこの派手な髪色が、あまりにインパクトが強すぎたから、あんな夢を見た?


ううん、違う。


順番が逆だ。


朝、家の洗面所で純ちゃんに会うまで、私は純ちゃんが髪を染めたことを知らなかった。


なのに、明け方。純ちゃんに会う前に、私は、この髪色の純ちゃんの夢を見ている。


だから、夢の方が、先――。

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