7つ真珠の首飾り
当時わたしは十にも満たぬ年だったが、とにかくこの国が異国と喧嘩をして敗けたのだ、ということだけは認識していた。

島が戦火に焼かれることはなかったが、本土の様子を知る手段がないわけではなかったので、幼心にも戦というものの恐ろしさはしっかりと植えつけられた。


それが王国で起こったというのだ。そして今現在その責任と孤独の頂点に立っているのが、わたしの隣に座ったうつくしい彼なのだ。

返事はできなかった。


「僕が玉座についたのはほんの半年前のことだ。

先代より20も若い新しい王――ここぞとばかりに隣国は経済的な面に置いて僕の国を圧迫してきた。

若いというだけで随分と軽んじられているのがわかってそれはもう悔しかったよ。
だけどその通りなんだ。

頭の回転の速さや斬新な発想に関しては自信があるよ。だけど何せ経験と知識が圧倒的に不足しているんだ。


戴冠して以来、臣下からの信用も薄くてね。彼らは自分たちで政治をやりたかったらしくて……正直に言うとそのおかげで僕もシズと会った最初の頃は頻繁に陸へやってくることができたんだ。

だけど最近では、そういうわけにもいかなくなってきて。


困り果てたある1人の臣下が、占いの力に頼ったんだ。
国随一の占い師に、現状突破の手立ては残っていないかと尋ねた。

その答えに僕は……耳を疑ったよ」


言葉を切るとティートは、少し待っていて、と身振りで示し、海へ飛び込んだ。

微動だにせず大人しく待っていると、しばらくして再び陸に上がってきた彼は片手に海藻のようなものを持っていた。


「何? その、べろべろしたもの」

「ワカメ。だけど、見せたいのはこれじゃなくって……」


味噌汁の具、としか認識していなかった食物の生命感溢れた姿に驚いたが、それをべろりとめくって現れたものを見た時の衝撃は、それを遥かに上回っていた。
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